――日本での販売戦略を練り直す
洗濯機や冷蔵庫などのいわゆる「白物家電」しか日本市場ではこれまで販売してこなかったが、AV(音響・映像)機器をはじめとするデジタル家電を売り出す。手始めに薄型テレビを発売する予定だ。高付加価値商品を来年にかけて相次いで投入したい。
中国最大の家電メーカーである海爾(ハイアール)集団は2002年に三洋電機と提携した。ハイアールと三洋の共同出資会社、三洋ハイアールが冷蔵庫や洗濯機を販売している。ハイアール独自の白物家電を日本市場向けにカスタマイズした商品が中心だ。主に若者向けにシンプルで使い勝手が良い製品をそろえてきたが、従来よりも高額の商品を投入するのを機に顧客のターゲットを広げていく。世界で販売している1万5000品目の中から高付加価値の製品を選んで、日本市場に持ち込む。
日本での売上高は2004年度実績で60億円だった。2005年度は100億円に引き上げる計画だ。
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日本で発売している ドラム式洗濯乾燥機「HSW-D50A」 |
――三洋と提携して丸3年が過ぎた
提携効果は大きい。まだまだ一緒にやるべきことはある。白物家電中心に共同開発も広げていく。三洋の製品の一部を昨年からOEM(相手先ブランドによる生産)で作っている。共同開発した製品は中国でも売っている。お互いの強みを組み合わせれば、消費者の満足度をさらに高められるはずだ。
ただ、三洋との提携は「日中経済交流の象徴」という意味合いが強い。単純な利益追求ではなく「社会貢献」という気持ちだ。こういう形の提携は初めてだった。両社のトップの哲学や思いが重なり合ったことが大きい。国と国の関係強化に役立ったという評価を諸方面から受けている。
日本企業との協力関係はオープンな立場で広げていきたい。三洋だけというつもりはない。過去には日立製作所のエアコンを取り扱ったことがある。そのほかにも様々な日本企業と手を組んできた。
――日本の消費者は商品を見る目が厳しい
品質を問う消費者意識の高さには驚かされるばかりだ。おかげでとても勉強になっている。消費者の声は中国の本社にもフィードバックし、商品開発に役立てている。
製品を梱包するダンボールに作業員の足跡が残っていただけでユーザーからクレームを受けたのには驚いた。中国では製品がちゃんと届けば、ユーザーから文句は出ない。しかし、日本では違う。この出来事をきっかけに、輸送作業員の靴にビニール袋をかぶせるようにした。コンテナ掃除にも目を光らせている。本社からは「そこまでしなくても」という声が上がったが、押し切った。日本市場で鍛えてもらえば、世界中のどこの国でも競争していけるからだ。
――日本市場では必ずしも期待通りの成果が出ていない
当初の目標を達成できていないのは確かだ。だが、どこの国に進出しても立ち上がりの時期は苦労するものだ。15年ほど前に米国やドイツに進出した。こうしたレベルの高い市場で受け入れられてきた実績がある。既に100を超える国で製品を販売しており、日本は当社にとってはほとんど最後に残った新市場と言える。
欧米に進出した当時と比べれば、日本市場ではむしろ苦労が少ないと感じている。世界に通用する商品力が備わってきたからだ。米国では進出当時、ブランド力が足りず、やむなくOEM供給から始めた。日本では自社ブランドを浸透させたい。
――白物家電では世界第4位の生産額を誇る
コスト競争力の高さが当社の強みだ。低コストの裏付けに生産量がある。原材料価格の高騰を受け、白物家電の部材価格が上がってきたが、世界規模の生産量を活かして、調達面でスケールメリットを出せる。
品質面では消費者の要求をできる限り取り入れていきたい。中国で農家のニーズをすくい上げ、ジャガイモを洗っても壊れない丈夫な洗濯機を開発した逸話は有名だ。
――日本の家電メーカーが中国市場に攻め込んでいる
中国市場での当社シェアは全家電製品の21%、白物家電に限れば35%と、極めて高い。20年前から市場を切り開いてきた成果だ。販売・サービス網も強固だ。
ただ、日本メーカーに比べればまだ若い会社と言える。人材、資金、技術レベルなどの面でまだまだ負けている。我々にとって日本企業は「先生」だ。今は勉強させてもらっている段階にある。日本メーカーは中国市場で本来の力をまだ十分に発揮できていないが、時間の問題だろう。
――人民元切り上げは日本への輸出を鈍らせかねない
中国から輸出する場合にはマイナスの影響が出るだろう。しかし、影響を受けるのは当社だけではない。原材料の輸入ではプラスの面もある。為替環境の急激な変化が混乱をもたらすのは明らかで、政府・当局は慎重な舵取りを選ぶはずだ。そうした配慮がなされれば、それほど大きな影響はないだろう。(聞き手は村尾龍雄・弁護士法人キャスト糸賀代表)
>> 杜鏡国さん略歴
>> 村尾龍雄さん略歴
| <記者の目>
ハイアールの日本事務所はいささか拍子抜けするほど簡素だった。場所は大阪市内のオフィスビル。小部屋を仕切った空間に数人分の机が並ぶ。冷蔵庫や洗濯機のサンプルが数点、無造作に置かれている。3年前、「中国家電最大手が日本上陸」と鳴り物入りで進出が伝えられた同社のヘッドオフィスとしてはシンプルすぎるぐらいにシンプルなしつらえだ。 日本でのハイアール製品の主な販売窓口としては、三洋電機との合弁会社「三洋ハイアール」がある。一方、杜社長が率いるハイアール日本法人のオフィスは中国本社との連絡窓口機能しか持たないという。 提携先の三洋電機は2005年3月期、1700億円を超える過去最大の連結最終赤字を計上し、経営立て直しが急務だ。ハイアールとの合弁事業にリストラが影を落とす可能性もある。不採算事業の見直しを迫られる三洋と、高級路線へのシフトをもくろむハイアール。発表当時、世間をあっと言わせた、日中の国境を越えた提携を取り巻く状況は静かに変わり始めている。
(ニュース編成部 重森泰平) |
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